出力
玄光社刊「プロフェッショナル デジタルプリント」(月刊誌コマーシャルフォトのムック版)に4ページほど書いたエッセイの内容が同誌本文に順を追って詳しく紹介されております。
紙に関しましても例を挙げて紹介されておりますのでこの項は当初予定を大幅に変更いたしますことをお許しください。
一般的な紙の選択方法、プロファイルの当て方等は前記本に譲ることにいたします。
本項ではメジャー雑誌では扱いにくい部分に重点を置いて解説してゆきます。その前に前記本で扱っていない紙の紹介を記載分とあわせてご紹介します。
●紙について

ご存知アルシュです。フランスのアルジョマリが出している水彩紙ですが,これの極細はジェットペーパーとして以前から使われておりました。パルプではなくコットンであることと無酸性紙であるために写真に向いていました。しかも四方耳付きのほぼA1用紙があったのも写真家にとって扱いやすかったのだろうと思われます。
私もポラ転写やポラの剥離などによく使用しておりました。水に大変強く2時間3時間浸けておいてもびくともしませんし、乾燥後にドライマウントをかけると完璧な平面性を取り戻しかつ左右の収縮が極めて僅かでした。日本ではミューズが代理店ですが、伊東屋、世界堂でも手に入ります。当然のことながら伊東屋は定価販売、世界堂は8掛。
そのアルシュが出したジェットペーパーです。マットブラックで黒は実用段階以上にしまってくれます。扱いは伊東屋、世界堂でも取り寄せ可能。
この紙のOEMもとは後述するハーネミューレです。

これはライソン。銀一で扱っておりますからご存知でしょう。良い紙ですが、染料向けです。顔料でマットブラックを使うと,多少つぶれる傾向にあります。ライソンのモノクロインキとの相性は抜群です。ただしライソンのモノクロインキはモノクロインキとは言ってもメタメリズムがありますから展覧会等でお使いになる時は、事前に展示場所の照明でテストをされることをおすすめします。
銀一では「染料ですが耐光性は30年」と言っていますが,それはちょっと誇大なようです。私の簡単なテストでは(日の入る窓際に置いただけ)一年経てば大分ハイライトから薄いグレーにかけての調子がとんで行きます。

ドイツのハーネミューレ社のフォトラグです。現在手に入る紙の中では最高峰の紙と言っていいでしょう。現時点では日本未入荷です。このA3+はドイツから取り寄せました。現在竹尾が扱っているものが唯一日本で手に入るものですが、サイズが大きいのと一枚1万円以上,しかもバラ売りなしで一箱25枚セットで売られていますから、個人の作品作りとして使うにはちょっと現実的でない値段ですね。
ただし,朗報はあります。先月銀一のM氏と話しているときに「もしかすると,うちで扱うかもしれない」と言っていましたから,あるいはそのうちに登場するかもしれません。顔料との相性が非常に良く、しかも白から黒まで実に美しい表現をします。水彩紙、版画用紙メーカーが出しているジェットペーパーはほとんどここがOEM元というのも頷ける紙です。
末尾で日本で手にはいるHarnemuleをご紹介。

最後におまけです。モノクロよりカラーに向いている紙です。銀座伊東屋扱い。モノクロで使うとここに紹介した紙の中ではワンランク落ちます。ただし染料でカラー印刷すると独特のヨーロッパ調(ってどんな調?)の色合いで良い感じです。
紙の紹介はこんなところです。ともかく顔料。顔料で使える紙に特化してお知らせしました。本来であればそのそれぞれのプリントをお見せするのが一番なのですが,残念ながら現状ではネット上でその差まで表すことはできません。皆さんがご自分で試されてご自身の作品にマッチする紙をお探しになって下さい。ここでの記事がその一助になればこんなにうれしいことはありません。
なお最後になりましたが、EPSONの純正フォトマット紙はフォトラグに負けない調子を再現します。ただ紙質が薄いのと大きいサイズ(せめてA1が欲しい)が、ないので、作品作りに使えないのは残念です。数は出なくとも作家向けの商品を用意してほしいものですが日本の企業にそれを期待しても無理ですから、それはアメリカ、ヨーロッパから探し出すしかないでしょう。この辺りは日本人としてはちょっと寂しいですね。ただエプソンのジェット用紙のOEM元はコニカなのでこちらから将来フォトマット紙が出てくる可能性はあります。
それから出力した作品は顔料であってもかなり水分を吸っていますから、自然乾燥したあとに必ずドライマウントでフラットニングをかけて下さい。これは印画紙の時と同じで,フラットニングをするとプリンターから出たままより明らかに作品のレベルが上がります。
この文章を書き終えた頃より紙の状況が大分変わってきました。現在EPSONが提供しているA3ノビにウルトラスムースファインアートペーパーというのがあります。これがフォトラグ並によい紙なのでこれを加えておきます。A3ノビ25枚入りで定価12500円ですが量販店で11000円ぐらい。MAXARTシリーズ向けの紙ですがカラリオでも使用可能です。カラリオで使う場合プロファイルはありませんから画材用紙から多少追い込んで使うのが良いと思います。 追記06/2/
●バルクシステムについて 永久チップ リプログラマー他
バルクシステムというのはインク連続供給システムのことで、銀一の店頭にあるライソンのモノクロインクのための連続供給システムと理屈はおなじになります。ただご存知のとおりエプソンのインクカートリッジにはICチップが埋め込まれていて、これがインク残量を管理しています。これがユーザー側から言うと「悪名高きえぷさんチップ」と言うことになりますが、あながちこれは功利主義からばかり取り付けられているわけではありません。IC23系と言われるPM4000PXのカートリッジには約15ccのインクが入ります。これが2/3ほど消費されたときに「インクがありません」とメッセージが出ます。これは完全にインクを消費してしまうとヘッドの乾燥を招き、インク詰まりを起こしてしまうからで、インクをカートリッジに残した状態で交換することによって印刷中にインクがなくなっても、インク交換さえすれば何事もなかったように印刷が続けられる構造になっています。
ただそうは言っても、1/3もインクを残して交換というのはこのカートリッジがだいたい1000円ぐらいですからインク交換の度に300円捨てていることになります。エプソンではカートリッジの回収を呼びかけて地球資源に優しいところをアピールしていますが、このカートリッジにのこったインクを回収して再利用しているとはとても思えません。もしそれをしたらインクの純度が保てなくなるでしょうから、結局これは廃棄されているに違いありません。掲げたスローガンに矛盾する行為ですね。従って我々もエプソンさんの高邁な企業理念に協力する意味でも、インクを捨てない、カートリッジを捨てない運動をしようではありませんか! て、言うのは冗談ですが、連続供給にすればとにかくインクは一滴も無駄になりません。1000円のインクを1000円分ちゃんと使えるんです。
が、あえて私はインクの連続供給はおすすめしません。日常的にプリント出力を何十枚もされる方にはおすすめの方法ですが、大体において展覧会前でもなければプリンターはそんなに活躍していないでしょう。連続供給ではインク瓶に空気穴があいていますから水性顔料インクの水分が蒸発して行きます。200ccものインクは1年やそこらでは使い切れませんから、使い切る頃にはけっこう濃くなっているかもしれません。これはプリンターにも色管理にも悪いことになります。
さらに連続供給するためにはカートリッジのチップを永久チップと交換しなければなりません。ここにも問題があります。初期のものは良いんですが最近の4000PXではこの永久チップをプリンターが判別して、廃インクタンクエラーを早めに出すという噂もあります。そこで私は下のようなものを作ってインクを充填して使っています。これですと今まで通り10cc使った頃にインクがありませんとメッセージが出てきます。そうしたらインクを充填して、チップを初期化して再使用します。

最後にインクをどうするかですが、リフィラーと言われる人たちは回収ボックスからカートリッジを回収してきて残っているインクを吸い出して使っているようですが、これはあまりおすすめできません。
前の使用者が純正インクを使っていたという保証はありませんから。
ついでに申し添えますがオークションなどで「回収純正インク」とうたって格安(といっても半額くらい)で売りに出されているものはほとんどこの方式で集めたものです。
従って「純正」ではなく「純正だと思うよ」インクなんです。
わたしはPX9000用のカートリッジを買って4000PXに流用しております。
これは同一インクですから全く問題ありません。このIC25系のインクの実売価格は5000円ぐらいですがこれには220cc入っています。
PX7000やPX6000で使われるIC24系のインクは4000円程で110ccしか入っていません。
従ってIC25系を使うことによって10ccあたりのインク単価が227円になります。
思い出して下さい4000PXのカートリッジは1000円で15cc。しかも5cc捨てますから10ccが1000円。
この改造でインク単価が約1/4になります。これなら色合わせに大量の枚数を費やしても、惜しくないでしょう。実に快適です。
が、以上のことはすべて自己責任でお願いいたします。
もしかするとエプソンの保証も受けられなくなるかもしれません。
従ってここではこういう方法があるというご紹介だけにして、具体的な製作上の注意点などは書かないことにします。
ただどうしてもとおっしゃられる向きにはメールで対応いたします。その場合もあくまでご自身の責任でお願いをいたします。
その結果起きるトラブルに関しては私どもではサポートも保証もいたしませんのでお含みおき下さい。
最後にこの改造カートリッジではCDへのプリントができなくなります。
CDへプリントするときに4000PXのベッドが上に上がるために、シリコンチューブの部分が天井に当たってしまいます。
従って私は本体にも改造を加えています。
改造と言ってもそんなに大袈裟なものではなく、ただちょっと削っただけですが、これは保証を受けられなくなる可能性大です。
ですから面倒でもCDに印字する時は改造してないインクカートリッジにのせかえるのが賢明かもしれません。
以上で本稿の解説を終わります。
最初から通読して下さった方には感謝いたします。
またメールで感想、激励を頂いた方々、本当にありがとうございました。
本稿企画直後にコマーシャルフォトから同一テーマでの原稿依頼が来ると言うタイミングの良さも重なりました。
私のホームページで言葉の足りない部分等は「プロフェッショナル デジタルプリント」(玄光社)で補って下さい。
長い間おつき合いいただき本当にありがとうございました。
2005年4月2日 風間雅昭
●PX-5500の場合
現在私はPX-5500を使っています。
PX-5500でもインクをカートリッジへ補填することが可能です。
しかも、PX-4000の時よりも簡単で、改造とは言えないほどです。カッターでたった一カ所切るだけです。
本体は一切さわりませんから、修理が受けられなくなることもありません。
問題は廃インクタンクエラーが出た場合にこの改造カートリッジをつけたままで、EPSONが修理に応じてくれるかですが、「付属しているカートリッジはすべて返却して下さい」と言う要望をつけて、試しに出してみましたところちゃんと新しいカートリッジを挿入して、改造カートリッジは別に梱包して返してくれました。
もちろん修理済みです。
ただ、戻ってきたカートリッジに「インクは純正をお使い下さい」と添え書きがありましたけど。
PX-5500は俗に言うIC39系インキですから、PX-9500用の220cc入りカートリッジからリフィルしています。
その方法についてはFotologicの「PX-5500でインキリフィル」をご覧下さい。 |