半畳記
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 近年印画紙に含まれる銀量が以前の半分ほどにも激減してしまいました。有力な作家や、特別のルートがある一部の人たちを除けば、もう以前のような輝く印画紙プリントを作ることはできなくなりました。ベルギー製やフランス製の銀量豊富な印画紙がまだ入手可能ではありますが、それは今まで使っていたシーガルやコダックやアグファではないのです。それに早晩それらも消えてゆくことでしょう。

 そこへ登場してきたのが顔料プリントです。EPSONがPM4000PXを発売以来、日本よりも海外でStylus Photo 2100/2200は写真家たちに圧倒的な支持を得ました。
続いてPX7000、9000、10000と出た大型顔料出力機によって多くの写真家が印画紙から顔料出力への移行を検討しはじめました。
 ただそこで問題になったのは、今まで培ってきた暗室技術をデジタル処理技術に置き換えなければならないことでした。作品制作には前衛的な作家でもテクノロジーの変換には以外に保守的なものです。
 あの中平卓馬でさえ、朝日新聞のインタビューで、「デジタル写真をどう思うか」と問われて
「写真家の行為ではない」と断言しているほどです。
 暗室作業は多くの写真家にとって「写真」そのものだったのです。ですからそれを捨ててデジタルへ行くのは、「写真」に対する裏切りと感じたのでしょう。「写真」への忠誠心と感傷から多くの写真家がデジタルへ移行するのをためらいました。

 そんな中で真っ先にデジタルへ移行を始めた写真家たちは、コマーシャルフォトグラファーでした。ただこのことが写真のデジタル化へ不幸な現象をもたらしたのです。圧倒的な資金力のある企業からの依頼によって成り立つコマーシャル業界では、一写真家の懐とは比較にならない金額で物事が進みます。写真メーカーもそれに雷同しました。
 機材のすべてがハイエンド、ハイエンドへと向かい、アマチュアや個人作家が作品を作るための道具としては、あまりに高価な環境ができあがってしまいました。手が出ないから否定するというネガティブな意見も多く散見されました。

 そこで700万円もするH1や3000万円のドラムスキャナーがなくとも、今まで以上のクオリティーでしかもカーボン顔料LYSONシステムに移行して、モノクロしか出せないプリンターにしてしまわないでも(ただしこれらのやり方は非常に美しいモノクロを生み出します)、店頭から買ってきたままのプリンターで美しいモノクロ出力ができるようにと考えました。
 中川政昭さん(05/7/18逝去)らの「画像文化研究会」などでもEPSONの技術者を招いて多くの写真家とプリンター技術者との意見交換を行いましたが、結論は出ませんでした。EPSONが海外でプリンターを販売するときに付けている「EPSON GrayBalancer」の検証なども行いましたが、これも結局あまり有力な武器とはいえないようでした。その原因は多くの人が無彩色の原稿を取り込んで、いかに色転びのない無彩色のプリントを得るかに専念するあまり、技術的なスパイラルにはまりこんでしまっているからだと思われます。  一番多くみられるのが多段階のグレーバンドを使って(GrayBalancerも基本的にはこの思想です)、どの濃度のあたりに色転びが起きるか検証し、その部分にPhotoshopのトーンカーブを当てて出力を無彩色に持ってゆくというやりかたです。このやり方ではデジタルモノクロはできません。もともと印画紙には色があったのです。さらにそれを調色して銀を染料に置き換えたりもしていました。  発想を転換しない限り、デジタルモノクロはできません。細かくトーンカーブをいじるようなやり方は出力機が変わると一からやり直しになります。ですからここではハイエンド機を捨てて、一般に手に入る機材で、誰でも簡単に美しいデジタルモノクロができるように話を進めていきます。  一、二のポイントを押さえれば誰でもきれいなモノクロが出力ができます。ただしここではPhotoshopがある程度使えることを前提として話を進めていきます。  下の五つのセクションに分けて話を進めます。どうぞためしてみて下さい。 ●1 画像スキャン 画像をスキャンする上での基本的な注意事項 ここから先はPhotoshopを基本に話を進めます。 古いヴァージョンで16bitで動かない場合は8bitで作業します 。
●2 レタッチ 画像処理の基本
●3 モノクロ化 いろいろなやり方がありますが、 ここではモノクロ画像のモノクロ化とカラー画像のモノクロ化を説明します 。
●4 画像補整 ひたすら丁寧にする手作業です。
●5 出力 出力機の選び方とジェット用紙の紹介。
 画像スキャン  スキャニングの基本はゴミをのせないということに尽きます。  それとすべてのスキャニングをカラーで行うことです。モノクロのネガもカラーリバーサルとしてスキャンします。そのあとで,イメージ/色調補正/階調の反転で色のないカラーリバーサルを作ります。また、むやみに大きなサイズで取り込まないことも肝要です。ここからさきはモノクロ化のところでお話しします。  取り込み解像度はA4に伸ばしたい時にPM4000PXで出力するなら250dpi(EPSONのプリンター解像度は7色機は7倍、6色機は6倍の表記になっていますから単色の解像度は1/7、1/6になります従って最大でも300dpiで充分です)、印刷で使用するならなら350dpiで当該サイズになるように取り込んで下さい。
 フィルム遺産をスキャンする場合は一度ですべてに通用するスキャニングはできないと思って下さい。発表の度にそのサイズに合わせて、スキャニングするというのが基本となります。誠に面倒ですが大きめに作っておいて小さく使う場合は縮小すればいい、と言う考え方は危険です。デジタル写真は拡大は500%迄、縮小は25%迄と言うことになっております。では実際はどうか、と言いますとわたしの仕事でやった例で申し上げますと、拡大はEOS20Dで撮影したデータをフスマぐらいに伸ばして印刷したことがあります。
 20Dは820万画素ですから印刷の場合350dpiとして、A4ちょい欠け位の大きさが原寸です。フスマというと畳一枚ですからA1が1.5枚弱。約10000万画素として実に12倍強の拡大となります。これをとくべつ画像処理屋に出さないでもデザイナーがPhotoshopで拡大しただけでそれは可能でした。印刷も特別な印刷を依頼したわけではありません。できあがりの印刷はムリムリかといえばそんなことはありませんでした。ものは金属とガラスでできたオブジェですから粒子というかノイズが目立てばすぐにクレームの付きそうな製品写真です。
 このようにPhotoshopの性能はすでにそこまで上がってきているということです。ですから理論値は別の話として現実に使えるか使えないかという話しで言えば、800%位までは普通に使えると思っていいと思います。ただし前提になるのは撮影に破綻がないと言うことが絶対条件です。我々の仕事で言えばスポンサーの手前とか、気分とかを別にすれば車か化粧品を撮影するのでなければ、EOS20Dクラスの解像度があれば充分だと言えます。「プロが20D?」と言われても平気で泰然としていられればの話しですが……。
 あと特別大きく出力しなければいけないという時は二倍ステップぐらいで徐々に拡大スキャンして目的の大きさまで持っていきます。そしてそのつどノイズをのせて粒子を作っていきます。(ノイズののせ方は画像補正で説明します)いきなり800%にスキャンしてノイズをのせるのと何段階かに分けてのせるのとでは仕上がりに差が出ます。何故そうなるのか理論的には説明出来るのかどうか分かりませんが、経験的に大きな拡大は段階を踏んだ方が良い、と言えます。
 ついでに申し添えますと、デジカメでの撮影はできるだけRAWデータで行います。仕事は印刷がターゲットですからjpg.でかまいませんが、作品は是非RAWで残して下さい。今後画期的で、すばらしい現像処理方法が出現するかもしれませんから。 最後に、フィルムのスキャンは必ずフィルムスキャナーで行って下さい。解像度がいっしょだから

画像スキャン  ●レタッチ  ●モノクロ化  ●画像補整  ●出力