再び都会の死
2006 年 5 月 27 日手持ちのマクロでブレブレですがお許し下さい。蝿は生きているようですがもう死んでいます。アリがたった一匹でそのハエを引いて行きます。死んでいたハエを見つけたのか、寒さで動きの鈍いハエに噛みついて蟻酸で殺してしまったのか、それはどちらだか分かりませんが、ともかくアリは自分の体よりはるかに大きなハエを巣に持ち帰ろうとしています。1ミリか2ミリ、一回に引く距離はホントに僅かで、それでも根気よく引いて行きます。
人間の神経はスパイラル状態に連係しているようで鬱状態ではこんなものにばかり目がいきます。逆に躁状態だと愉快なもの明るいものにばかり目がいって、なかなかその状態から抜けられないようになっているものらしいですね。そういうときは無理に神経に逆らわないで、なすがままに放置します。下降スパイラルならとことん下降してゆく。そのうち何かのきっかけで、不意に上向きになったりしますから。これは、アリがハエを引いてゆく図ですからそれほど見ていて「ウ~ム」ということはないんですが、私小さいときにいやなものを見たことがあります。
カマドウマってご存じですか? ぼくたちは便所コオロギって呼んでいましたけど。この個体自体が気味の悪い生きものなんですね。コオロギって呼ばれていますから脚が長くて頭と胴と腹に昆虫らしく分かれていますが、はねがない。ヌードのコオロギ。脚だけはすごく長くてピョーンと跳びます。夜中に喉が渇いて流しに行ったんですね。信州の台所ですから土間になっていて、流しの脇にはへっついやなんかがある時代劇に出てくるような作りです。この土間の一隅に変なものを見つけたんです。人間普段見慣れているものでもその組み合わせが予想外だと、とっさにはそれがなんだか分からないものらしいんですね。目の端に違和感を感じて、なんだろうと近寄って、じっとみて、それでも分からなかったものが、はっとした瞬間に気付いたんです。便所コオロギがゴキブリの上に乗って、ゴキブリを食べていたんです。じっと見ているとゴキブリにはまだ息がある。それを頭の方から囓っていくんですが、ごくわずかにかさかさという咀嚼する音が聞こえます。これはちょっとショックでした。翌朝見たときにはゴキブリの羽だけが残されていて、しかもその羽が素敵にきれいだったんです。不気味って言葉は知っていましたがまのあたりにしたのは初めてでした。カマドウマがゴキブリの天敵だってことを知ったのはずっと後年になってから。ですからその時は見てはいけないものを見てしまったような気分になりました。
なんだか、どうしても下降気味なんでこれでやめます。