悔しい、Paco de Lucia
2005 年 7 月 30 日今日は長くなるかもしれません。それほど悔しい話なんです。本題に入る前に、このギター。私が中学生の頃お年玉を貯めて買ったギター、当時で四千円。当時としてもそんなにいいギターのかえる値段ではありませんでした。クラッシクとレキントの中間みたいな変なサイズのギター。「白いギターに、代えたのは….♪」なんて流行っていた頃は白く塗られていました。それから塗料をはがして再びニス仕上げに。だからもう、ボロボロのギターなんですが、この背中のサインは伊達じゃない。なんとPPM(ピーターポールアンドマリー)のPeter Yarrowさんのサイン。
なんでPeterさんのサインがここにあるのかっていうのは又ながい話があるんですが今日は割愛。ちょっとフレット音痴ぎみのぼろギターがこのサイン一つで貴重品になるんだから、ありがたいことです。しかも、Peterさんはこのギターでプライベートコンサートまでやってくれたんですから。さらにその時私は彼らの持ち歌でない「七つの水仙」をリクエストして、「それは、僕らの歌じゃない」とまで言わせてしまったんですから、こわいもの知らずです。さて、ここから本題です。Paco de Luciaと言う名前はギター好き、ジャズ好きの方ならご存じでしょうが、今世紀(20世紀)最強のギタリストだと、私は勝手に思っています。ジミヘンやクラプトン、ケニーバレルもいいんですが、やっぱりパコ、何たってパコ、絶対パコなんです。私の友人に若いときJAZZのラッパ吹きだった男がいます。今はタブラ奏者ですが、この男が実に音楽に詳しい、ただしクラッシックは除くんですが(このへんが村上春樹と違います)。何十年前になるか、ラヂオから流れてきたギタートリオの演奏に、衝撃を受けたことがあります。音楽を聴いていると、時々心臓をぎゅっと掴まれるような気分におそわれることがありますが、この時の衝撃はちょっと言葉で言い表せません。それほど強烈に私の中へ飛び込んできたんです。「凄い、凄い」と独り言を言いながら、あふれてくる涙。全く今まで経験したことのない感動でした。のちにこれこそが”Duende”だと教わりましたが。演奏終了後、放送局へ電話しました。そして教えてもらったのが「Friday Night in San Francisco」Al Di Meola + John McLaughlin + Paco de Lucia、私が自分で見つけたこのPacoというギタリストを自慢げにかのラッパ吹きに吹聴したところ、彼は私に一本のテープをくれました。「エアチェックだから音は悪いけど…」といってくれたのが「Live under the Sky」1981年7月25日 今は無き田園コロシアムでの実況中継録音。どしゃ降りの雨の中、チックコーリアとパコが壮絶なバトルを繰り広げています。まるで日本ではないかのような観客の声援。NHK FMからのエアチェック。雨の音とあまり良くないチューナーからの録音という悪条件でありながら凄まじい演奏です。ほんとうの音楽好きはなにか不思議な能力で名演奏にたどり着くみたいです。私はこの録音テープをAIFFに書き換え、CDに焼きました。そしてそれをその後に知り合った音楽好きなグラフィックデザイナーのY氏(以前花粉症でご紹介)に「こういう人がいるけど知ってる?」って言って差し上げたのです。以来彼はパコフリーク。演奏会も何度かご一緒しました。今年のパコ、実は私、行ってないんです。Pacoは日本でやると、あんまり良くないんです。それで今回もつい。しかし、しかし、これが大間違いだったんです。下の写真見て下さい。
ナ、ナ、ナント!Pacoじゃありませんか!どこ?「六本木、Pacoが来るかもしれないって言うんで」だって。あの東京に台風の来た日です。「台風だから来ないかもしれない、って言われたんだけど行ったんです」だって。そうしたら12時頃になってスタッフと奥さんと子供づれで来たんですって。その結果が上の写真。YさんにPacoを教えたの私なんですよ。しかもY氏、田園コロシアムの実況録音盤、私があげたやつ、Pacoにあげたんですって。「Paco、喜んでたよ」ですって!「あの演奏会はよく覚えていたみたい」だって!ウーーーーーー、クヤシイ!!!!!。でもまあいいか、演奏会行ってないんだから、しょうがないか、って自分を納得させてみましたが、うーん、それにしても羨ましい。翌日は演奏会ないのにPacoは爪の手入れをしたそうです。そしてそのヤスリを店に置いていったんだそうです。「もう、みんなで取り合い」ですって。
帰って一人で田園コロシアム、聴きました。